2021年に急騰を見せた、ソラナ(SOL)やアヴァランチ(AVAX)について気になっている人は多いだろう。
これらの通貨は、イーサリアムに取って代わる可能性を秘めているともてはやされたことから、「イーサリアムキラー」とも呼ばれている。
果たして、今年も同じような急騰を見せる銘柄はあるのか、それはまたイーサリアムキラーになり得るのか…。
今回は、昨年イーサリアムキラーが急騰した背景を細かく噛み砕きながら解説し、2022年の動向について考察していく。
ブロックチェーン技術における「レイヤー1」とは
イーサリアムならびにイーサリアムキラーと呼ばれるブロックチェーンは、レイヤー1と称されることが多い。
まずは、このレイヤー1が一体何を示しているのかについて解説していく。
ブロックチェーンには様々な種類があるが、これを大きな括りとして4つのレイヤー(階層)に分けることができる。
レイヤー1 |
一番ベースとなるレイヤーで、ブロックチェーン基盤それ自体を指す。 例:イーサリアム |
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レイヤー2 |
レイヤー1の課題を解決するために利用される技術。レイヤー1に該当するブロックチェーン外で取引を実行することができる。 例:ポリゴン |
レイヤー3 |
レイヤー4のアプリケーションやサービスが適切に動くようにするために、基盤となるしくみ。 例:Dapps |
レイヤー4 |
レイヤー1やレイヤー2の技術をより表面化し、多くの人々が簡単に利用できるようにするツールやプラットフォーム。 例:OpenseaなどのNFTマーケットプレイス |
今回話題となるレイヤー1とは、様々存在するブロックチェーン基盤そのものを指している。
イーサリアム(ETH)はレイヤー1の中でも代表格だ。
そして、イーサリアムキラーはその名の通り、イーサリアムに代わる新たなレイヤー1である。
つまり、ソラナやアヴァランチといった急騰した銘柄もレイヤー1にあたるということだ。
イーサリアムキラーが注目を集める最大の理由、イーサリアムの問題点とは
そもそもイーサリアムも、ビットコインの問題点を解消しつつ、さらに機能を拡充させた新たな技術として2015年に誕生した。アルトコインとしては歴史が古く、それ故長らくトップを走り続けてきたブロックチェーンでもある。
しかし当然、イーサリアムが抱えている問題もいくつかあるのだ。
特に大きな問題として語られるものが「スケーラビリティ問題」だ。イーサリアムが採用しているコンセンサスアルゴリズムはPoW(プルーフ・オブ・ワーク)と呼ばれており、ビットコインも同様のものを採用している。これは、取引時に行われる合意形成が高性能なコンピュータによる複雑な計算によって行われ、ブロックに記録されていくというものだ。
ところがこの仕組みでは1秒間に13件程度しか処理を行うことができず、需要が高まっている中で取引に遅延が起こるようになってしまった。
イーサリアムでは、ガス代と呼ばれるネットワーク手数料を多めに支払うことで優先してトランザクション処理を行えるが、これがガス代の高騰を招いているのだ。取引にかかるガス代が上がれば上がるほど、人々はイーサリアムと同じような機能を持ちながらもっと手数料がかからないブロックチェーンを求めるようになる。
その結果、イーサリアムキラーと呼ばれる新たなレイヤー1銘柄が注目を集めるようになったのだ。
NFT関連で急騰したSOL(ソラナ)
昨年価格が急騰したソラナのチャートを見ていこう。
ご覧の通り、8月の後半から価格が急騰していることがわかる。結果として2020年から2021年の1年間で、ソラナは約58倍もの価格にまで上がったことがわかる。
現在は急騰時よりも価格が落ちてはいるが、それでも2021年当初の価格とは比べ物にならないレベルだ。
ソラナが急騰した背景には、NFTへの注目が集まりイーサリアムのガス代が高騰したことがある。2021年に入ってNFTが注目を集めるようになり、イーサリアムの需要が非常に高まった。
しかしそれとともにガス代が高騰し、イーサリアムに代わるレイヤー1が求められるようになったのだ。
そこに白羽の矢が立ったのがソラナである。
ソラナのコンセンサスアルゴリズムはPoH(プルーフオブヒストリー)と呼ばれるもので、PoS(プルーフオブステーク)の一種だ。ソラナの処理速度は1秒間に約5万件といわれており、イーサリアムと比べると圧倒的な速さを誇る。
さらに、ネットワーク手数料もイーサリアムほどかかることはなく、コストは約3万分の1に押さえられるのだ。
このように、イーサリアムが抱えるスケーラビリティ問題を解消しているという部分に大きな注目が集まることとなったのだ。
イーサリアムはこのまま衰退するのか?アップグレードへの期待
イーサリアムのNFTシェア率が、今年に入って約95%から約80%に低下したとのニュースが話題となった。一方で、ソラナのシェア率は増加しているという。
このままイーサリアムは衰退していくのだろうか?
イーサリアムの最大の問題点であるスケーラビリティ問題を解消することができれば、イーサリアムキラーの台頭を防ぐことができる。イーサリアムは2022年中に大型アップデートを予定しており、スケーラビリティ問題が大幅に改善される可能性があるのだ。
スケーラビリティ問題を生み出す根本的な部分、コンセンサスアルゴリズムをPoWからPoSに移行するのである。既に段階的にアップデートは行われており、最終的なアップグレード完了まで秒読み状態となっている。
つまり、このままイーサリアムがイーサリアムキラーに成すすべなく負けていくという可能性は低く、またイーサリアム復権の道は残されていると言っても良い。
2022年もイーサリアムキラーは注目されるのか
昨年イーサリアムキラーが急騰した大きな要因は、イーサリアムのスケーラビリティ問題とNFTブームが絡み合ったことにある。
イーサリアムがスケーラビリティ問題を解消すると、今需要が分散しているイーサリアムに再び注目が集まる可能性も大きい。2022年もイーサリアムキラーそのものが注目されるかというよりも、どんな銘柄が注目されるのかという視点が大切になってくる。
その場合、ポイントとなるのは以下の4つだ。
- 話題のNFTやメタバース関連で有意義なブロックチェーンかどうか
- イーサリアムとの互換性が優れているかどうか
- イーサリアムが抱えるスケーラビリティ問題を解消しているかどうか
- 新たな注目ポイントを持っているかどうか
ソラナやアヴァランチといった昨年急騰を見せたレイヤー1は基本的に、1~3を満たしている。
ポイントとなるのは4番だ。
NFTやメタバースと同じように注目を集めている、DeFiが2022年はより注目を集めていくことが予想される。
DeFiはブロックチェーン上で金融取引を行うことができるサービスの一つだ。金融機関を通さないため、コストを抑えながら素早く取引ができる特徴がある。
これも一つの「新たな注目ポイント」となる。
また、DeFiの需要が増えていくことで、より高度なセキュリティが求められるようになる。
2021年は特にDeFiで大規模なハッキングがいくつも発生した。この部分にどう対処していくか、という点も注目ポイントだ。
2022年年初はアメリカの金融引き締めの加速等もあり、仮想通貨市場は下落からのスタートとなっている。このため、なかなか今後の見通しを持ちづらい部分がある。
しかしソラナのチャートに見るように、長期的に見ると確実に価格は上がっている。今後また高騰を見せるかどうかは、先ほど紹介したポイントをクリアしているかどうかが重要となってくるだろう。