仮想空間は今や娯楽だけではなく、様々な事業が展開される経済市場となった。
メタバースと呼ばれる仮想世界へは、デジタル化しやすい産業の活躍の場だと誰もが想像するだろう。
しかし今、リアルな世界からデジタルな世界へは到底移行できないような分野が続々とメタバースに進出している。
今回は特に相次いで大きな話題となった、印刷会社の新たな挑戦について紹介していく。
大日本印刷の挑戦~ブロックチェーン技術を使った新事業を発表~
大日本印刷といえば、国内の印刷総合会社トップ2の内の1つだ。そんな大手企業が、ブロックチェーン技術を使った新たな事業を発表した。
ブロックチェーン技術を活用した事業を展開する株式会社Gaudiy(ガウディ)と提携し、新たなデジタルコンテンツを提供する実証実験に入ったのだ。
実は大日本印刷はこの提携発表以前より、「XRコミュニケーション事業」に注力していた。
端的に言えばリアルとメタバースを連動させる取り組みだ。
例えば、新宿駅を模したメタバースを作ったとしよう。メタバース新宿駅で切符を買ったらそれを本物の新宿駅で使える、これがXRコミュニケーションの究極の形だ。
同様の技術を用いたGaudiy(ガウディ)どの実験の第一弾は次のようなものだ。
1月21日から2月6日まで行われていた「約束のネバーランド POP UP SHOP in 東京アニメセンター」にて、メタバースを構築しファンに提供。メタバース内では作品のファンが集い、グッズやアイテムを収集したり交流したりできるようになっている。
構築された世界へは、メタバースアプリ「clister」を用いて入場するしくみだ。
凸版印刷の挑戦~著作権を保護する機能を持ったアバター生成管理基盤を開発~
凸版印刷は、大日本印刷と対をなして日本を牽引する印刷総合会社の一つだ。
同社は現在ものすごい勢いで様々なバーチャル事業に取り組んでいる。その一つが、NFTを活用したアバター生成基盤の開発だ。
「AVATECT(アバテクト)」と呼ばれる管理基盤はNFTを使ってアバターに唯一性を持たせることができるため、アバターの著作権を守ることができる。
これによって、アバターを不正に利用したり盗まれたりすることを防ぐのだ。メタバースでは、リアルの自分に成り代わるアバターが必要となる。
これからどんどん需要を増していくであろうアバター産業に、凸版印刷は目を付けたのだ。
現に2021年11月時点で同社は、2Dである写真からそのまま3Dのアバターを生成できるシステムを開発し、提供している。
さらに同社は2月21日に、ビジネス向けメタバース基盤を開発し大きな話題を呼んだ。なんとメタバースに色や質感などを反映し、よりリアルに近い空間を提供するというのだ。
「MiraVerse(ミラバース)」と呼ばれる仮想空間では、商談や会社間の作業での利用を目的としているという。
リアルはメタバースに取り込まれるのか
印刷総合会社のトップを走る2社が、メタバース産業に乗り出し競い合っている。
印刷という産業は、リアルとは切っても切り離せないものだと思っていたがそうではない。リアルをどんどんメタバースに取り込むという方法で、新たな事業を展開しているのだ。
いずれ匂いも味も温度も、メタバースの中で感じられるようになるだろうか?まるで映画のような世界が、もうすぐそこまでやって来ているのかもしれない。
油断しているとすぐに置いていかれそうなスピードで、メタバース産業は躍進している。