アートを新しい形で人々の手に届けることができるNFTは、作品とアーティストをより強固なチェーンによってつなぐことができる。
そんな素晴らしいシステムを利用して、もっと多くの作品を世界中に届けようとするプロジェクトがある。HTC VIVEのアートプログラム「VIVE Arts」だ。
今回は、同プロジェクトがミュシャ財団とタッグを組んでスタートしたオープン記念セールについて触れながら、NFT作品がもたらす光と影について考えていく。
HTC VIVEのアートプログラム「VIVE Arts」とは何か
HTC VIVEは、2016年にHTCとValve Corporationによって開発されたVRヘッドセットだ。
HTCといえば、台湾に拠点を置くスマートフォン端末メーカーとしてよく知られている。
また、Valve Corporationは、アメリカワシントン州に拠点を置くコンピュータゲームの関連企業で、世界的に名高いゲーム配信サービスである「Steam」を運営していることでも有名だ。
両者がタッグを組んで開発したHTC VIVEを使ったプロジェクトは多岐にわたる。
例えば日本法人では、実際にHTC VIVEを使ってVR空間内でサービスを提供するスタッフやアンバサダーを募集しており、仮想空間の中で働くことが可能になっている。
「VIVE Arts」は、その中でも力を入れているプロジェクトの一つだ。
「VIVE Arts」の取り組みとして、「Step into Cat Art」バーチャル展の催しは記憶に新しい。
VRゴーグルを装着すると、124点にもわたる猫「CAT ART」の展示会へ足を運ぶことができる。
いつでもどこからでもゴーグル一つでアクセスできる手軽さにも関わらず、一度踏み入れたらなかなか帰ってくることができないほどの没入感はアートを愛する人々のみならず、仮想空間に興味を持つ人々に人気を博した。
このように、「VIVE Arts」はアートとデジタルイノベーションがもたらす新たなカルチャーを融合させ、人々にもっと身近で新しい体験をもたらすことを目指している。
そしてその背景では、様々なアーティストの支援や作品の保護を目的に据えているのだ。
「VIVE Arts」が新規プラットフォームをローンチ、ミュシャ作品をNFT販売
12月9日、「VIVE Arts」はデジタルアート作品のNFTプラットフォームをローンチした。17日からは、オープン記念としてミュシャ作品をNFT販売することを発表した。
チェコの有名な画家であるミュシャの作品は、現在独立非営利慈善団体であるミュシャ財団が管理しており、同財団とのコラボレーションによって、今回のオープンセールは実現された。
8日に始まったミュシャ財団主催の展示会と並行して、同プロジェクトは進行していく。
展示会は4月まで行われ、今回のセールが終了しても展示会期間中は毎月NFT販売を実施していく。
展示会最終週には、ミュシャの代表作品である「スラヴ叙事詩」の110周年記念も合わせて、スペシャルオークションが実施される予定だ。
アーティストの支援と保護を可能にするNFT作品の落とし穴とは?
絵画を含むアートのNFT作品がアーティストの支援や保護につながるのは、なぜか。それは、ブロックチェーンに作家の情報が唯一無二の記録として保存されることで、その後転売されたとしても作家本人に利益を還元することを可能にするシステムだからだ。
特にデジタルデータのアートは、無断複製による再配布や盗作などの権利侵害行為を完全に断つことができない。
こうした現状からアーティストを救う光のような存在だと誰もが思っている。
ところが実際のところは、そればかりではない。光があれば闇も生まれる。
このシステムを悪用すれば、他人の作品を盗作して唯一無二の自分の作品として販売することができてしまうのだ。
生きている人間なら抗議のしようもあるが、故人ならどうだろうか?亡くなった人の作品を盗用し、ブームに乗っかって儲けようとする倫理観が欠如した人間も実際に現れている。
これではアーティストが浮かばれないだけでなく、作品の価値を本当に推し量ることができない。まだ法が整わない状況での爆発的なNFTブームは、アーティストの希望の光でありながらこうした闇を孕んでいることを忘れてはいけない。
作家と作品の関連性はいつでも目を見張りつつ、NFTアートを購入する際には慎重になる必要があるだろう。