NFTは様々な分野で取り込まれ、活用されている。その中でも、日本で最近増えてきているのはNFT×観光だ。
一体どのように観光分野にNFTを取り込んでいるのか。今回は佐渡と石垣島2つの事例を紹介し、NFT×観光がもたらすベネフィットと今後の可能性について考察していく。
NFT×観光の事例①NFT観光資源プランコンテスト2022
佐渡観光交流機構と(株)スナップ新潟が共同で実施する「U29佐渡観光NFTプランコンテスト2022」は、NFT×観光の新たな取り組みだ。本コンテストは、29歳以下の市民や若手起業家を対象としており、NFTやブロックチェーン技術を生かした観光資源の活用プランを募集する。
コンテストの大きな目的として、佐渡金銀山世界遺産登録がある。世界中で盛り上がっているNFTを活用することで、国内だけでなく海外からも注目を集める狙いが想定される。
さらに、コンテストコミュニティを通して「仲間を探す」「仲間と出会う」ことも目的とし、NFTと観光両面から「価値」を創造していくことを目指す。
既に、NFTプランを考えるプランナーとコンテストコミュニティの運営を担うコミュニティマネージャーの募集は終了。今後販売予定のオーディエンスNFTを購入した者が、交流市民として提案されたプランに投票できる権利を獲得する。
オーディエンスNFTはStellaを通して販売されており、現在も購入可能だ。価格は一つ5,000円となっており、電話番号とクレジットカードがあれば誰でも購入可能だ。
NFT×観光の事例②石垣島観光案内チケットNFT
「石垣島観光案内チケットNFT」は、NFT X SKY株式会社と株式会社ブライトスターが提携し発行するビットコイン系実用型機能性NFTだ。
販売対象は外国人観光客となっており、日本人よりもNFTが浸透する外国人から注目を集める狙いが想定される。大きな特徴はビットコインパブリックチェーンを利用したフルオンチェーン仕様であること。これにより、発行されるチケットNFTの改ざんや偽造は限りなく不可能となる。
同NFTを所有していると、日本語・中国語・英語ができるスタッフが石垣島の観光ガイドをしてくれるサービスが受けられる。NFTには、R・SR・SSRの3つのランクがあり、それぞれ18,000円・38,000円・58,000円の価格となっている。(※)全NFT合計100名先着で、先行予約販売は既に終了。7月28日より一般発売がスタートしている。
※価格は一般販売のもの。
NFT×観光が増えているのは何故?ベネフィットとは
NFT×観光について、2つの事例を紹介した。最近、こうした事例は明らかに増えてきている。
NFT×観光が増えてきている背景には、新型コロナ流行による観光産業による経済悪化とNFTの流星にある。2020年より流行した新型コロナウィルスによって、現在(8月25日時点)日本では原則として海外渡航者の受け入れを停止している。(例外あり)
6月より観光客の受け入れを開始したが、入国時には陰性証明の提出が必要であることやツアー参加が必須であることなどもあり、数字は伸び悩んでいる状況だ。7月のデータを見ると、観光客の数は7903人。これはコロナウィルス流行以前の2019年と比較すると実に300分の1の数字だ。
こうした状況下で、観光事業を展開する企業や団体はなんとかして外国人観光客を取り込む必要がある。そこで目を付けているのがNFTだ。海外では、日本よりもNFTに対する注目度が高い。観光産業と掛け合わせることで、NFTに興味を持つ外国人を取り込もうという狙いがあるのだ。
こうした取り組みは、NFT産業を展開する企業にとっても好機になる。観光とNFTが同時に盛り上がっていけば、双方がともに成長していくことができる。これを目的に、NFT×観光が増えていると推察する。
NFTは観光を通して浸透するのか
NFT×観光によって、NFTは浸透するのだろうか?
NFTに興味のあるユーザーにとっては、NFT×観光は参入しやすい分野だ。しかし、NFTを知らない未認知層にとってはそれほど参入しやすいとは思えない。クレジットカードで気軽に買えるからといって、NFTが何なのかわからなければ、購入には至らないのだ。多くの場合、敢えてNFTを購入する理由がわからないだろう。
このため、NFT未認知層に観光NFTを購入させるハードルは高いと言える。
この部分を乗り越えなければ、NFT×観光がスタンダードになる可能性は低い。この課題の解消方法も含めて展開される新たな観光NFTの登場が楽しみだ。