日本にはあまりなじみがないが、世界各国の生活基盤にもなっている「宗教」
人々の価値観や道徳観の基盤となり、生活を支えていると言っても過言ではない。
NFT流行時から、宗教の中でもNFTへの注目度は非常に高まっている。今回は、日本を代表する神道とNFTの様子をお伝えしながら、宗教とNFTについて考察していく。
検見川神社のお守りNFT
千葉県にある検見川(けみがわ)神社では、お守りをNFT化して販売を始めた。
販売専用サイトにアクセスし、Metamaskを接続すると販売されているお守りNFTを閲覧し、購入することができる。通常、神社で売っているような恋愛成就や健康祈願のお守りだけでなく、デジタルならではのフロアプライス下落除やウォレット安全祈願など、ユニークなものも並ぶ。どれも一律0.005ETHの価格設定だ。
購入したお守りは、1年間お守りの効力を発揮した後、自動的にお焚き上げされるため、お守りの処理を心配する必要がない。お焚き上げ後は、お守りとしてのNFTではなくなるが新たなNFTへと変化するようになっているという。
今後検見川神社では、お守りNFTの他にも御朱印NFTやご奉納NFTの販売を予定。さらに、メタバース内に神社の設置を予定するなど、最先端の取り組みについて明らかにしている。
デジタル完結だけじゃない、神道×NFT
検見川神社だけでなく、NFTを取り入れる神社は非常に増えてきている。
例えば、三重県明和町の竹神社でも、デジタル御朱印の販売がスタートした。本プロジェクトは、一般社団法人明和観光商社と株式会社博報堂やCryptoGames株式会社が共同で行っている。
購入するためには、竹神社社務所にて提示されるQRコードを読み込む必要があるため、実際に現地に赴く必要がある。しかし本プロジェクトは、観光促進の一環であるため敢えてこのような形を取っているのだ。デジタル完結ではなく、NFT活用方法として新たな方法が示されたといえる。
様々な形のNFTと宗教
今回紹介したように、神道×NFTは比較的導入しやすさがうかがえる。お守りや御朱印といったNFT化しやすいものがあるからだ。同じように、仏教でもNFTはどんどん取り入れられており、御朱印NFTはOpenSeaでも買える時代となっている。
しかし、宗教とNFTの関係は実態のあるものをデジタル化しさらにNFT化するという流れだけに留まるものではない。
イスラエルのCryptoVerses社では、昨年時点で聖書の詩をNFT化し販売する取り組みを行っている。聖書の一節を切り取って販売すること自体は権利を侵害するものではないが、それで売上を立てることに関して些か疑問を感じる。本NFTを購入したからといって、購入者が詩の所有者になるわけではなく、あくまで詩が記載されたアイテムを所有するという感覚だ。
これがどのように価値を生み出すのか、未知数であることも否めない。また、この取り組み自体が宗教母体ではなく民間企業のものであるため、余計なうさん臭さを感じる。
しかし、宗教に取り入れるNFTの形は様々に展開できることがよくわかった。こうした取り組みは、今後もどんどん拡大してくだろう。
さらに今回紹介したような歴史ある宗教だけでなく、新興宗教でも同じことができるということも言える。むしろ、NFTを信仰対象とした新たな宗教の誕生さえもあり得るのだ。実際に、ブロックチェーン上で信仰されるゼロ・エックス・オメガ(0xΩ)という非中央集権型の宗教の存在は、2018年に確認されている。
NFTと宗教を連動させることによって、既存の宗教は新たな信仰の形を生み出すとともに、新たな宗教を創り出していくのだろう。