仮想空間メタバース。ブロックチェーン技術を活用することで、メタバース内に経済圏を確立。リアルと変わらない生活ができるようにと夢見て、日々さまざまな開発が進められている。
「リアルと変わらない」ことは人々にとって便利な世界であり、脅威でもある。例えば、メタバース内での犯罪だ。実際に起きた時、誰が取り締まるのか。問題は山積みである。
今回は、メタバース内の犯罪を想定して様々な取り組みを進めているインターポールとフランス警察の事例から、メタバース犯罪について紐解いていく。
インターポールがメタバース「INTERPOL Metaverse」をリリース
インターポール(国際刑事警察機構)は、独自にメタバースをリリース。
インターポール事務局本部をメタバースないで仮想見学でき、実際の警察官との交流やトレーニングを受講できるようになっている。
そもそもインターポールは、190か国以上が参加する国際的な組織だ。国を跨ぐ国際犯罪に関する情報の収集・調査、犯罪予防・対策のための会議の開催などを運営している。
ブロックチェーン技術を活用したメタバースは、国境という柵を超えて利用できるため、国際犯罪という扱いになる可能性が高い。
実際に犯罪者によるメタバースの悪用は既に例が出てきている。今後は、マネーロンダリングや詐欺、ランサムウェアといった犯罪行為に使用されるリスクが懸念されている。
こうしたメタバース犯罪に立ち向かうべく、インターポールではメタバース専門家グループを設立。メタバース内の安全を守るための議論も日々行われているのだ。
今回インターポールがリリースしたメタバースは、あくまでこれまでの活動をメタバース上でシームレスにしていくという意図が見える。このため、メタバース犯罪を直接取り締まるといった直接的な関連は今のところ無さそうだ。
フランス警察、ブロックチェーン探偵ZachXBTの情報をもとにNFT窃盗団5人を起訴
フランスでは先日、250万ドル相当のNFTを盗んだ疑いで5人が起訴されている。
今回の窃盗は、フィッシング詐欺の手法を使って行われた。窃盗グループは、BAYCとMAYCの静止画NFTをアニメーション化できるサービスを提供する偽サイトへ誘導。そこでNFTを抜き取るしくみだ。
この窃盗の被害者は、ブロックチェーン探偵ZachXBTに調査を依頼。ZachXBT氏がTwitterを通して発信した情報をもとに、フランス警察が行動を起こしたという流れだ。
ZachXBT氏は、日頃からブロックチェーン上での犯罪について調査を行い、発信を続けている。こうした活動が、警察を動かす結果となったわけだ。
直接警察に被害を訴えないのは、現行法で対処できない事例が多いからだ。現状ではNFTを盗まれても返ってくる確率は低く、泣き寝入りするユーザーも多い。警察に相談しても門前払いを喰らうことも。
NFT窃盗に対して警察が本格的に動きを見せたフランス警察の事例は、NFTを嗜む人々にとって朗報だ。
ブロックチェーン関連犯罪の取り締まりは誰が担うのか
今回紹介した2つの事例は、別々に捉えた方が良い。NFT窃盗は、あくまでフィッシング詐欺という詐欺罪を問われる行為で、明確な犯罪として立件可能だ。
しかしメタバースの方はどうだろうか?
アバターを着てメタバース内で実行された犯罪を、リアルの人物とどのように結びつけるのか。メタバース内での現行犯逮捕は可能なのか。メタバースの住所はどこになり、どの国の警察が対応するのか。
問題は山積みである。だからこそ、インターポールが率先してこの問題について議論していくことで、メタバースの安全の将来性が決まっていく。