2021年も終わりが見えてきた。
今年は特にビットコインを中心に様々な通貨が史上最高値を更新し、市場は大いに賑わった。その中でもNFTは終盤にかけて加熱し、これからどんどん注目を集めていくことになるだろう。
そのような中で各国での規制も相次ぎ、中国では仮想通貨全面禁止の意向が発表され、中国国内に拠点を置いていた取引所やマイニング企業は他の拠り所を探さなくてはならなくなった。
さて、そんな中国だったがクリスマス前夜の24日、新華社が中国からNFTを発行したというニュースが飛び込んできた。果たして中国でのNFT産業は許容されるのか、今回はこちらのニュースを取り上げていく。
新華社がデジタルニュースをNFTで発行
新華社は中国の国営通信社で、主に中国国内のニュースを海外向けに発信している。今回の発表では、2021年のニュースをまとめたデジタルニュースをNFTで発行したとある。
同社の公式発表記事では、「11のプレスリリースを10,000部ずつ発行する」とある。また、1部のみ発行の特別版もあるようだ。このNFT発行物は「デジタル・ニュース・コレクティブルズ」と称し、新華社のアプリで24日から配布されている。
新華社のNFT発行に対する中国当局の見解
気になるのは、仮想通貨全面禁止の中国でNFT発行は許されるのかというところだ。
そもそも新華社は国営企業であるため、今回の発行を通して中国ではNFT関連の産業は問題ないと解釈できるようにも思う。
実際の中国当局の見解は、今回のニュースを報じたブルームバーグの記事から読み取れる。
中国当局はNFT自体を違法とはしていない。しかし、仮想通貨関連の技術が用いられていることもあって、グレーゾーンの存在だとしている。
つまり現時点では違法性はないが、今後取締りの対象となる可能性はあるということである。
11月にはNFT自主規制を求める圧力も
話は少し遡るが、今年11月中国の大手IT企業であるアント・グループをはじめとして各企業などがNFTに関する自主規制規約を発表している。
自主規制とは言ったものの、これは中国政府が示す11の意向に沿った形で発表されている。
実質、中国規制当局からの圧力とも見て取れる。自主規制規約を発表した大手インターネット企業のテンセント・クラウドは8月時点で、「Huanhe(ファンへ)」という名のNFTプラットフォームを起ち上げたばかりだ。また、さらに遡ると5月には、アリババがNFTマーケットプレイスをリリースしている。
このように、実は中国国内では今年初旬から既にNFT産業へ参入する企業が相次いでいた。
そのようななかで中国当局より「仮想通貨全面禁止」が言い渡され、NFT産業へ力を入れ始めていた各企業にとっては肝が冷えることとなっただろう。現在、規制前に立ち上がったプラットフォームがどうなっているかというと、国内では法定通貨のみの決済のみに限ってNFTの売買が行われている状況だ。
また、NFT商品を「無償で」提供することができる機能を提供しているものもある。今回の新華社の「無償で」発行というところにも納得がいく。
今後の中国でのNFT産業への規制はどうなるのか
現時点では規制対象にはなっていないものの、様々な企業の動きを見ていると当局は早い段階から仮想通貨と同じようにNFTに対して懸念を示していることがわかる。仮想通貨のように大きな盛り上がりを見せると、目を光らせている当局から鉄槌を食らう可能性が高い。
各企業はこの辺りを警戒して慎重にNFT事業に注力しているのだろう。中国当局は、仮想通貨の規制に際して様々な観点から懸念を示していた。その内の一つに、マネーロンダリングなどの違法行為が増えるというものがある。
NFTも同様に、普及していけば投資対象となりマネーロンダリングの温床となることが懸念されている。中国の仮想通貨規制は何年も前から話題となっていたが、実行に移された今回、NFTも対象となる可能性は0ではない。
今すぐに規制が始まるわけではないが、ゆくゆくは規制対象となっていく可能性が高いのではないだろうか。